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保証人が保証契約を行う上で、最も多く生じるのは「家賃滞納」による責任ですが家賃滞納以外の保証リスクを考慮しておく必要があります。
想定できない損害賠償責任リスク
保証人を引き受けた際、想定できる損害賠償と、想定できない損害賠償があることを前提に考えましょう。
想定できる損害賠償リスクとしては、「家賃の長期滞納」です。
この長期滞納は極度額で定められていくことなので、問題はないでしょう。
では、想定できない損害賠償リスクは、どのようなものがあるでしょう。
最も多いものとしては、
- 賃借人の自殺
- 賃借人が隣人に危害を加える
- 自室への非常識な破壊行為
主にこの3ケースがあります。
それぞれ、判例をもとに順にケースを見てみましょう。
賃借人が自殺したケース
前提条件
賃借人:A氏
家賃:6万円
エリア:東京都内
賃貸借期間:2年契約
訴訟内容
賃貸借期間中に自殺したため、部屋を貸すことができない賃貸人が賃借人および保証人に損害賠償を請求した。
判決
自殺があった部屋は、その後居住することに嫌悪感を生じるのは一般的であり、賃借人は部屋内で自殺すべきではなかったとして、保証人らの賠償責任を認めた。
賠償金額は、通常とれるべき家賃1.5年分
判決の理由
裁判所が、損害賠償を1.5年分の家賃と算出した理由は、
1年目は、自殺があった部屋としては、まともに賃貸することはできない。
2年目は、通常の賃料の半額程度でしか賃貸できない。
と判断したから、というのが理由です。
個人的には、何年経とうが、嫌悪感を持つ人は持ちますし、自殺後すぐであっても家賃の安さを魅力に感じて、喜んで入居する人もいます。
この判決の中で、賃貸人が請求したにも関わらず認められなかった点があります。
それは、「賃貸人以外の隣部屋や階下の部屋」については損害は認められなかったという点です。
たしかに、嫌悪感をもつかどうかは、人それぞれですが、家主目線でいくといくらなんでもあんまりだなと思います。
賃借人や保証人ら損害賠償を認める一方で、隣部屋や階下はおろか、他の部屋は自殺とは無関係のため、嫌悪感は生まれないとして、自殺した賃借人のつかっていた部屋のみの損害のみを認めるというのは、通念上ちょっとおかしな判決にも思えます。
今後の対応
今後、民法が改正されたことで、このような判例も過去のものとされ、違う判決が出る可能性はあります。
ただ、判例の中で定められた範囲を超えるのか。
逆に、さらに保証の範囲が限定されるのか。
そもそも個人保証人を超える範囲なので保証されないのか。
まだわからない点が多いのも現状です。
例えば、個人保証の極度額といった面でいえば、賃借人が死亡した時点で 契約が終了しています元本は確定することになります。
元本が確定すると、それ以降新たに生じた損害に保証責任は生じないとされています。
しかし、部屋内での自殺による死亡によって生じる損害は、そもそも死亡時に発生したと考えられますし、そもそも信頼して借りているにも関わらず、自殺という賃貸人への裏切り行為によって生じる損害ですので、個人保証人への請求は一定額請求できて然るべきでしょう。