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新型コロナウイルスの感染者数が連日報道されています。
感染の原因となる微生物とは、普通肉眼では見えず、顕微鏡で拡大して初めて観察できる極めて微小な生物群です。この微生物によっておきる病気は、かつて「疫病」と呼ばれ、人間を長きにわたり苦しめてきました。医学の歴史は、ある一面において、この微生物との戦いの歴史ともいえます。
しかし「感染する」というのはどういう状態のことをいうのでしょうか。
このことは以外としらないので調べてみました。
感染が成立する定義
感染とは、ウイルスや細菌などの微生物が生体内に侵入してきて、
生体内で定着・増殖し、いわゆる「寄生されている状態」になった場合のことを
「感染した」と定義されています。
感染の3要素を断つことが感染管理
日本では「三密」と叫ばれていますが、
感染を管理するための原則が3要素定義されています。
この感染が成立するための3つの要素(感染の3要素)を
断ち切ることが感染管理の原則です。
1、感染源
感染の原因となった微生物が付着している「もの」を感染源といいます。
たとえば、ドアノブ、トイレの便座、他人の使用したマスクや手袋など
ウイルスや細菌が付着している「もの」が感染源となります。
2、感染経路
病原体となる微生物が感染源より感受生体に侵入する経路を「感染経路」といいます。
たとえば、経口感染であれば口を経路として感染したことですし、
接触感染であれば接触を経路とした感染になります。
他に、経気道感染(空気感染)、経皮感染(皮膚からの感染)などがあります。
3、感受生体
感染の原因となる微生物が侵入し増殖した生体のことを感受生体といいます。
いわゆる「感染者」のことですが、ここでは人だけでなく、動物もさしますので
感受生体といっています。
米国疾病センター(CDC)では、感染管理として以下分類にて具体策を示しています。
- 標準予防策
- 感染経路別予防策
- 職業感染対策
感染には4種類ある
感染している状態というのは一概に1つだけではありません。
大きくわけると4種類の感染している状態があります。
1.不顕性
顕在しない。見えないという意味です。
感染が成立しているのに特有の症状がでない。または認められず一見すると健康そうに見える場合のことを不顕性感染といいます。
このような状態の場合でも抗体産生(生体に侵入した細菌などの抗原を処理して、再度同様な状況が起きたときに対応できるようにリンパ組織( Bリンパ球)が抗体を産生する機能)があると考えられています。
つまり、いわゆる抗体が機能して対応できるように体が反応してさらに抗体をつくっている状態という感じです。
日本脳炎、ポリオなど
2.菌交代症
常在菌は宿主と共生することでお互いが均衡を保っているが抗生物質などの投与によって、
薬に対する感受性がある菌が死滅し、逆に耐性がある菌が増殖することで均衡が崩れ病気になることがあります。
カンジダ症、ブドウ球菌性腸炎
3.潜伏
不顕性感染が慢性になった状態で、病原体との間でともに共生しているような状態で感染をしている状態のことを潜伏感染といいます。
ヘルペスなど
4.日和見
病原性が弱く感染を起こす力がない菌が、生体の抵抗力が下がった状態のときに宿主に感染を起こすことを日和見感染といいます。
感染症の5段階分類
感染には、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で
危険度に応じて5段階の分類がされています。
分類にはそれぞれの感染症の原因となるウイルスや細菌などが危険度に応じてわけられておりその5段階の分類に応じて、国や自治体がどう対応するか、どのような措置を講じるかもきちんと決められています。
1~5類まで感染症はあり、1から5になるにつれて危険度が下がります。
一類感染症
- エボラ出血熱
- ペスト
その他、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、マールフルグ病、ラッサ熱があります。
対応:原則入院
措置:対物消毒、建物の消毒、通行制限等も適宜行う
感染力や罹患した場合の重篤性に基づく総合的な判断からみて
危険性が極めて高い感染症であるとされている感染症です。
二類感染症
- 急性灰白髄炎(ポリオ)
- 結核
- ジフテリア
- 重症急性呼吸器症候群
- 中東呼吸器症候群
- 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)
対応:状況に応じて入院
措置:対物消毒
総合的にみて危険性が高い感染症として定義されています。一類に比べると危険性は低い。
三類感染症
- コレラ
- 細菌性赤痢
- 腸管出血性大腸菌感染症
- 腸チフス
- パラチフス
対応:状況に応じて
措置:特定職種への就業制限、対物消毒
総合的にみた場合の危険性は高くはないが特定の職業への就業いよって集団感染を発生させうる可能性がある感染症。そのため就業制限なども行うと定義されています。
四類感染症
- E型肝炎
- A型肝炎
- 狂犬病
- ボツリヌス症
- マラリア
- デング熱
- ジカウイルス感染症
- レジオネラ症
- 日本脳炎
- エキノコックス症
その他、黄熱、Q熱、炭疸、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9を除く)、野兎病、ダニ媒介脳炎、つつが虫病、日本紅斑熱、ハンタウイルス肺症候群、ブルセラ症、発しんチフスなどがあります。
対応:適宜対応
措置:媒介動物の輸入規制、消毒、廃棄等を行う。
健康に大きな影響を与えるおそれがあるものの動物や飲食物などを媒介して感染する感染症であるため、人から人に感染することのない感染症。
五類感染症
- インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。
- ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
- クリプトスポリジウム症
- 性器クラミジア感染症
- 梅毒
- 麻しん(はしか)
- 水痘
- 性器ヘルペスウイルス感染症
- 尖圭コンジローマ
- 手足口病
- 破傷風
- 百日咳
- 風しん
- 流行性角結膜炎
- 流行性耳下腺炎
- 淋菌感染症
- マイコプラズマ肺炎
その他、アメーバ赤痢、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
感染性胃腸炎、急性出血性結膜炎、クラミジア肺炎(オウム病を除く)など馴染みのある名前が多いです。
新型の感染症の場合
1~5類に分類される感染症の場合と、新型の場合とでも対応は変わりますが
新型の場合は、2段階で対応が決まっています。
ニュースなどででてくる対応措置の文言をみて、どの程度だと政府が認識しているのか確認ができます。
新型インフルエンザ等感染症の場合
対応・措置…消毒等
新型インフルエンザとは、新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザのこと。
等となっているのは、「再興型インフルエンザ」とわけられているからです。
再興型インフルエンザとは、かつて世界的規模で流行したインフルエンザであり、かつ国民の大部分が免疫を獲得していないために蔓延による健康被害の影響が考えられるものを指します。
指定感染症の場合
対応・措置…厚労相が公衆衛生審議会の意見を聞いた上で必要な入院や対物措置を政令で規定
指定感染症とは、政令で1年間以内の期間指定される感染症のことです。
新感染症の場合
対応・措置…厚労相が原則、公衆衛生審議会の意見を聞いた上で、都道府県知事の事務に関し必要な指示をし、一類感染症に準じた対応を行う。
新感染症と認められるには条件が3つ必要です。
- 人から人に伝染すると認められる疾病であること
- 既知の感染症とは症状が異なること
- 重特性が高く危険性が高いこと
この条件が重なって、総合的に厚労相が判断した感染症のことを指します。
予防策について
感染症を伝染させない予防策も、CDC(米国疾病センター)が
「Standard Precautions」(標準予防策)として予防策を推奨しています。
もっとも危険性があるのは院内感染ですので院内感染を想定はしていますが
日常生活でも参考になります。
1、手指衛生
2、手袋
3、マスク、ゴーグル
4、ガウン
5、器具
6、リネン
上記が、手指の接触感染と飛沫感染を防ぐための予防策になります。
ただマスクやゴーグルも正しい装着方法があります。
布マスクや不織布のマスク程度で予防策にはなりませんのでその点は他の防具と同じです。
結論
ひとくちに感染症とは言ってもこのように様々に危険度を測れるように規定がされています。
ただアメリカなどの諸外国にくらべて近年大きなパンデミックなどに巻き込まれなかった幸運が仇となり、日本にはCDCのような感染対策専門チームがありません。
そのため市区町村にある保健所が、今回のようなケースで最前線で判断を迫られたり
疾病には素人の災害対策の専門チームが現場入りしたりといった混乱が見られました。
この疫病をきっかけに日本でも、感染対策の疾病専門チームができることを願っています。