賃貸住宅を退去するにあたっての退去精算の流れを知っておきましょう。

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こんにちは。

本日は、賃貸住宅の解約業務についての流れを解説したいと思います。

退去に関して、意外と知られていないことも多く、入居者、管理会社、オーナーどの立場の方でも参考になるようまとめております。解約にあたっての確認を順序立てて行わないと後々のトラブルになりますし、解約のトラブルを未然に防ぐために入居時の契約を考える上でも重要な問題です。ぜひご一読いただければと存じます。

解約通知は一般的に「借主」発信

今回説明する賃貸契約は「普通賃貸借」を基本として進めます。定期借家契約など様々な契約がありますのですべてに当てはまるわけではないことはまずご理解ください。

さて、普通賃貸借の場合、解約を申し出る立場はほとんどが借り主側になります。

その理由は貸主側からの解約は、借地借家法などの法律の制限から余程の事情がない限り事実上困難だからです。このあたりはまた別の記事で解説しますが、「悪質な長期滞納」や「周囲への罵詈雑言や騒音など」明らかに正当事由が必要でかつ、裁判所の判決が必要です。

というわけで、「借り主からの解約通知」が届いた前提で進めます。

解約は拒否できない

まず前提として、借主からの解約通知は拒否できません。理由はともかく電話、LINE、書面などを通じて解約の申し出がありますのでこの通知をもって解約の受付をします。

その際、できれば退去理由をヒアリングしておくと、今後のマンション運営の参考になります。例えば「隣人がうるさい」とか「共用部が汚い」「水道の出が悪い」など住んでいないと気づかないちょっとした不満がでることがありますので、こういった小さい不満を解決していくだけで勝手に入居率はあがるものです。

余談ですが、法的には解約通知自体は電話での意思表示でも事足ります。ですが、うちの場合は、必ずなにかしらの書面でもらうようにしています。

理由は、証拠が残らないからです。

では、なぜ証拠が必要なのでしょうか?

それは「解約予告期間」があるからです。

解約予告期間

賃貸物件において、ほぼ全ての物件で「解約予告期間」が設定されています。

解約予告期間とは、賃借人(入居者)が賃貸人(物件オーナーや管理会社)に対し、入居物件の退去日から起算して解約することを通知しなければならない期間のことで、「今月末で退去します。」とか「明後日引っ越すので解約します」というのは住居であっても事務所テナントであっても事実上不可能です。

理由は「解約予告期間」として契約の解約を一定期間猶予することができます。言い換えれば、猶予期間を含めて解約通知を事前にしなければならないということですし、即時解約をしたければ猶予期間分の賃料を収めることを条件として解約できるという流れになります。

例えば解約予告期間が2ヶ月になっている物件の場合で3月中に退去したい場合、1月31日までに解約通知を出す必要があります。

ところが2月中旬に急に当月中に退去したくなった、もしくは退去が必要になった場合、どうすればよいのかといえば3、4月分の賃料を支払うことで2月中の退去が可能になります。

この解約通知を受けて、即時解約を申し出る入居者は意外と多いので解約通知を受け取ったらまず、その旨は先に伝えておきましょう。トラブルになる部分の一つです。

解約日=引越し日ではない

ちなみに「解約日」ですが、入居者によっては「引越しする日=解約する日」と誤解している場合があります。たとえば上記の説明内で3月末に退去する場合で3月31日引っ越し、4月1日に立会いになる場合、4月分の家賃が発生する場合があります。

引っ越ししているかどうかと、実際に解約できる日かどうかは関係ありません。現実的にもう二度と部屋に入ることができないように鍵を引き渡した日が解約日となります。

また、逆に解約日を迎えてもなお、引越ができていない場合や荷物が残っている(残存物)場合もまた解約にはなりません。自分では処理できないので残存物片付け費用などを支払って片付けてもらうことも可能ですが、「ただもう部屋にすみたくないから」という自分勝手な理由で解約することはできません。

こんな人いないでしょ?と思うかもしれませんが、こういった主張をする入居者は一定数いますので、貸す側もしっかりとそのあたりを理解した上で貸すことが重要です。

原状回復費用の範囲と金額

ここ最近でもっとも揉めることが多いのが「原状回復費用」です。

解約通知を受け取り、解約日(退去立会い日)を迎えるにあたってまずは借主の費用負担の精算金を計算して臨みます。

  • 解約予告期間違約金
  • 短期解約違約金
  • ルームクリーニング費用(予め契約で定められている金額)

このあたりが事前に算出できる金額です。特に違約金がなければルームクリーニング費用のみになるケースが多いです。

次に、退去立会い日を迎え、部屋を一緒に内見しますが、この立会いの際に原状回復の範囲でもめることが非常に多いです。

原状回復における「原状」とは「入居した時と同程度の状況」を指す言葉です。あくまでも同程度であって経年劣化は含まれませんが入居者がつけたキズや汚れは故意過失問わず借主側の負担になります。

原状に戻すことが目的ですので「入居前からあったキズや汚れ」は対象外です。

ですので

「自分はこんなキズをつけてない」
「入居したときから不具合があったんだ」と、主張します。

敷金がある場合、敷金よりも工事負担金が多くなり敷金が返ってこないどころか、負担金まで請求されることでトラブルになるケースもあります。

敷金をそもそもとっていない物件の場合、すべて借主負担で請求することになりますので、話はまたややこしくなりますが、対処法は次項で説明します。

保証会社の補償内容もチェックしておく

解約予告期間を無視した即時解約にあたっての「解約予告期間違約金」は当然、契約書では入居者に請求できますが、なにせ退去していく入居者への請求ですので、追いかけて請求することがそもそもが面倒な案件です。できれば保証会社の補償でさっさとすませて置きたいところですので、保証会社の補償内容はしっかりとチェックしておきましょう。

  • 解約予告期間違約金は何ヶ月まで補償してくれるのか
  • 退去時クリーニング費用は何ヶ月まで
  • 原状回復費用の補償内容
  • 鍵交換費用などの保証内容

まとめ

解約時のトラブルの多くは、契約時に避けることができます。

入居者を多く入れたいがために、契約内容を曖昧にしたり、条件をゆるくして敷金礼金0円でハードルをさげて入れたがために、退去時の精算でもめるなんて話はよく聞きます。ですので退去時を見据えて契約をすることが大切です。

解約予告期間、原状回復の範囲、クリーニング費用の範囲、鍵交換費用の有無、短期解約違約金など退去時には思いの外お金がかかる場合があります。

何もボッタクってるわけではないのですが事前の説明などがないことが原因で起こるトラブルといえます。そもそも入居者側からすれば「退去する部屋になぜお金を払わないといけないのか」という気持ちもわからなくはないので、必ず契約書でしっかりと説明し理解してもらった上で入居してもらうことが大切です。